リーガル・
アップデート
銀行の顧客に対して国家は賠償責任を負わない
オーストリアの憲法裁判所は、破綻した銀行の顧客が被った損害が当局の不十分な監督によって引き起こされた場合でも、オーストリア共和国はその損害に対して責任を負わないという判決を下した。Commerzialbank Mattersburg (コメルツィアルバンク・マタースブルク) の顧客約30人が、オーストリア連邦政府に対して損害賠償を請求していた。しかし、問題となった法律の関連規定は合憲であると判断された。オーストリアの憲法裁判所によれば、銀行の規制と監督は、金融市場の機能を守ることを目的としており、個人投資家を守ることを目的としていない。(Constitutional Court of 16.12.2021, file G 224/2021 et al.)
2022年1月7日固定費手当(Fixkostenzuschuss)を家主に渡す必要はない
最近の判決で、オーストリアの民事最高裁判所(OGH)は、新型コロナウィルス感染症のパンデミックが原因でビジネスにおける家賃滞納が発生した場合、借り手が国から受けている固定費手当(Fixkostenzuschuss)を家主に渡す必要があるかどうかの問題について取り扱った。民事最高裁判所(OGH)によれば、固定費手当は、パンデミックにより影響を受けているビジネスの支払能力および資金の流動性を維持するためのものであり、賃料の損失を相殺するためのものではない。それどころか、固定費手当の受給には、損害を最小限にする義務があるため、家主に賃料の減額を要求する義務さえある。(3 Ob 184/21m)
2021年12月22日クローズドエンド型不動産ファンドの投資家のための「永久」撤回権
クローズドエンド型不動産ファンドの特徴は、限られた投資額、限られた投資対象、長期に及ぶ投資期間、そして、非常に限られた出口オプションである。オーストリアの憲法裁判所(VfGH)は、消費者が投資確認書を受け取っていなかったり、不完全なものを受け取っていた場合、期間制限なしで投資からの撤回権があることを確認し、結果、資本市場法(KMG)の関連規定は憲法に適合していることが確認された。(VfGH dated 25.09.2021 Ref G 130/2021-15)
2021年12月9日欧州司法裁判所(ECJ):買収法に基づく手続きのEU法への違反
オーストリア公開買収委員会はウィーン証券取引所に設置された独立機関で、いかなる指令から独立している機関である。委員会は、オーストリアの買収法に基づき、資本市場における主要な取引の審査を行っている。しかし、欧州司法裁判所は、現在の法的状況では法的保護が不足しているとみている。欧州司法裁判所によれば、オーストリア公開買収委員会は、独立した公平な裁決機関ではなく、その決定に対する効果的な法的救済措置の施行は不可能で、これはEU法、特に欧州基本権憲章第47条に反している。(ECJ dated 09.09.2021 Ref. C 546/18 and C-605/18)
2021年11月24日単一処理委員会(SRB)と銀行徴収金
欧州第一審裁判所(EGC)は、銀行徴収金に関する単一処理委員会(SRB)の決定を取り消した。単一処理委員会はEUの機関であり、銀行徴収金を課すことなどにより、倒産の恐れのある金融機関の秩序ある破綻処理を図っている。原告の銀行は、銀行徴収金の計算方法が不透明であることを批判した。欧州第一審裁判所はこの主張に沿って、銀行徴収金の計算に関する基本的な規則がEU法に違反しているとの見解を示した。単一処理委員会がこの判決を最終裁判所である欧州司法裁判所で検討してもらうことは、まだ可能である(EGC T 411/17 dated 23.09.2020)。
2021年5月7日